Author
青地 芳彦Yoshihiko Aochi
一般的にECM製品のサイジングでは、考慮すべきパラメータが数多く存在し、それらが複雑に関係するため、公式を用いてでズバッと導き出すことが難しくなっています。以下はシステムのサイジングにおいて考慮しなければならないパラメータの一例です。
- ユーザの利用シナリオ:業務によって、文書を閲覧するだけか、更新が多いのか、検索の頻度などによって、システムに必要なリソースが異なります。
- 思考時間: 上記のユーザシナリオに関係して、ユーザが1つの操作から次の操作を行うまでの時間(考えている時間)は、サイジングを行うためのパフォーマンステストのパラメータに必要です。この時間が短いと、単位時間当たりの同時利用ユーザ数が増えることになり、システムの負荷が高くなります。
- コンテンツの種類:テキスト系のコンテンツなのか、画像系のコンテンツなのか。画像系のコンテンツであればメタデータ以外にインデックスは作成されないので、検索サーバに対する負荷は少なくなります。テキスト系のコンテンツが多い場合には、この逆になります。
- ユーザ数:特に同時利用ユーザ数が多い場合には、当然ながらシステムの負荷が高くなります。
- コンテンツ数:一般的にコンテンツが多い場合には、トランザクションの増大によるシステム負荷の割合が大きくなります。Alfrescoのパフォーマンス特性としては、コンテンツの量が少ない場合には、同時接続ユーザ数はレスポンスタイムに大きな影響を与えない傾向にあります。
- フォルダ階層:Alfrescoのフォルダ階層に制限はありませんが、フォルダ階層が深い場合には、検索やブラウズに時間がかかる傾向があります。また、1フォルダ当たりのコンテンツ数が多い場合も同様です。
- 1コンテンツ当たりのサイズ:サイズが大きい場合には、I/Oやインデックスの作成に対する負荷がかかる傾向にあります。
- 単位時間当たりのコンテンツの更新量:バッチ処理などで、一度に多くのコンテンツを投入したり、更新したりする場合には、システムの負荷が大きくなります。
- ACL(Access Control List、アクセス権限のセット):種類が多いほど、アクセス権の判定に対してCPUに対して負荷がかかる傾向になります。
- コンテンツタイプとプロパティの数:コンテンツタイプ(文書の種類分け)とそれに付随するプロパティ(メタデータ)の数が多くなると、システムの負荷が大きくなる傾向にあります。また、Alfrescoではコンテンツタイプを継承したサブタイプを持つことができますが、この階層が深くなると同様にシステムの負荷が大きくなる傾向にあります。
- グループとグループの階層:グループの数や、グループの階層が深くなると、ACLのチェックのためにCPUに対して負荷がかかる傾向にあります。
- Disk I/O, Network I/O:Alfrescoはコンテンツ(ファイル)をディスクストレージに、プロパティ(メタデータ)をデータベースに格納します。高速なディスクであるほど、システムのレイテンシは小さくなります。例えば、コンテンツの格納ストレージとしてNFSを利用するよりも、ローカルのストレージや、FC(Fiber Channel)などの高速I/Oのストレージを利用した方がパフォーマンスは良くなります。Network I/Oについても同様です。
- 運用時のCPU、メモリ使用量の閾値:システムの運用において、それらの上限が定められているためには、許容量を考慮した設計が必要になります。
正確なサーバサイジングを行うためには、上記のパラメータを考慮したサイジングのためのパフォーマンステストを行うことが必要になりますが、プロジェクトの初期や見積時にはこれらの数値が不明ではあるが、なんとか概算を見積もらなければならない場合もあります。以下の表は、上記の一部のパラメータのみを考慮し、今までのお客様の設定例と、パフォーマンステストでの結果を元に算出したサイジング数値です。システムサイジングの目安、参考値としてご利用ください。
小規模 パターン1 |
小規模 パターン2 |
中規模 | 大規模 | 備 考 | |
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Alfresco Content Services利用規模 | |||||
ユーザ数 | 100 | 300 | 1,000 | 8,000 | |
同時利用ユーザ数 | 15 | 45 | 150 | 600 | |
サイト数 | 100 | 300 | 1,000 | 3,000 | |
ドキュメント数 | 10,000 | 30,000 | 100,000 | 800,000 | バージョン管理によるコンテンツ、レンディション、サムネイルとして生成されるコンテンツを含みません。 |
システム要件 | |||||
CPU(コア数) | 2 |
2-4 | 4-8 | 12* | *検索(Solr)サーバを分離して構成。 Alfresco:8 cores, Solr側:4 cores |
システムメモリ | 6GB以上 | 8GB以上 | 12GB以上 | 36GB以上* | *検索(Solr)サーバを分離して構成。 Alfresco: 12GB以上, Solr: 24GB以上 |
Javaヒープサイズ | 4GB以上 | 6GB以上 | 8GB以上 | 28GB以上* | *検索(Solr)サーバを分離して構成。 Alfresco:8GB以上, Solr:20GB以上 |
ディスク容量 | 32GB以上 | 60GB以上 | 180GB以上 | 1.2TB以上 | 1MB/コンテンツで計算。コンテンツ領域、インデックス領域、データベースを含む |
【参考URL】
Alfrescoについて